My thought about relationship between Art and Science (2016)


情報とテクノロジーが錯綜する中で
現象と遭遇する瞬間を描くこと


私は様々な科学的な現象の中に視覚的な美術表現の可能性を見出し、 主にそれらの接続方法について研究、作品制作を行ってきました。具体的には、だんだん化学反応を起こすことでスライムが出来てくる装置や、 液体が自然の力でフラスコの中を動き続ける装置などを設えることによって 化学反応や物理的な現象を人間が視覚的・体感的に受け取るための仕掛けや、 それらと出逢うための関係性を構築する装置、場、空間などを制作してきました。 表現方法はインスタレーション、写真、映像、絵画、デジタルグラフィックなど多岐にわたります。 最近は特に、水、ガラス、プリズム、粘性流体など、自然現象を見せてくれる素材を扱い、 良く晴れた日の日照時間のみ室内で虹と遭遇出来るという空間作品など、 一定の条件下でしか出逢えない現象をテーマに制作・研究しています。

何故このようなアプローチを続けているのかというと、 何が真実か断言出来ない混沌としたこの時代であっても、 人間が身体を通して、様々な現象を知覚する実感を信じたいからです。 それは私の表現の根本が描くことから始まっているからかもしれません。 私にとって描くこと/ドローイングは何かの現象を知覚し、身体をもってある瞬間を捕まえること、それ自体です。 今の時代は、人間が作り出したけれど人間が認知しきれないほどの人工的な情報が世の中に当たり前に存在していて、 自然も人間の影響によって作り変えられてきて先が読めない異常気象・災害が世界規模で多くなってきていて、 巡り巡って今までは問題なく動いていた社会のシステムにも随所に破綻が現れてきている時代だと思います。 私はこうしたテクノロジー・人間・自然の関係性の中で現代のリアリティを感じます。 この混沌の間を縫うような感覚、アナログとデジタルの間で行ったり来たり揺蕩ったりして 現象と出逢っていく感覚が私の作品制作の原動力になっています。